2024年1月、ISSBは、初めてサステナビリティ報告の統一された世界共通のベースラインとなる新基準を最終決定しました。 このISSB基準は、ばらばらで混乱を招いている規制やフレームワークの現状を一本化するだけでなく、気候関連情報開示の一貫性と質を高める役割を果たすと期待されます。
ISSBの基準は世界中の証券規制当局によって承認されています。したがって、欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)やカリフォルニア州の新しい気候データ説明責任パッケージのような画期的な法律とも、CDP(Climate Disclosure Project )のような自主的フレームワークとも密接に連携しています。
この記事では、ISSB基準の目的、その要件、それを満たすために企業がしておくべき準備を解説します。
ISSBとは―設立の背景―
2つの新基準、IFRS S1とIFRS S2は気候関連情報開示の世界共通のベースラインとなります。
ここ10年、さまざまなサステナビリティ報告フレームワークが入り乱れて分かりにくくなり、企業、投資家、規制当局などステークホルダーの間では不満が高まっています。 この問題に対処するために、国際会計基準(IFRS)の策定を担うIFRS財団が2021年に設立したのが国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)です。 ISSBの任務は、乱立している報告ガイダンスを集約することでした。投資家が求めているのは、各社の事業に影響を及ぼすサステナビリティ問題から生じるリスクと機会が分かり、一貫性があって、比較可能で、信頼できる情報です。これに近づけるために世界共通のベースラインをまとめようという狙いでした。
しかし、ISSBの任務は前途多難でした。なにしろ多種多様で一貫性のない提言を世界基準として一本化するのは難問です。しかも、どこでも、どの組織でも採用できるインクルーシブ(包摂的)でバランスのとれた基準であること、かつ時代の要請に合わせて調整しやすい設計であることが求められるのです。 とりわけ重要なのは、規制当局が指針として使えるだけの詳細な基準にすることでした。
気候関連情報開示の新時代
2023年6月26日、ISSBは2つの新しい世界基準を最終決定しました。「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(IFRS S1)と「気候関連開示」(IFRS S2)です(以下「ISSB基準」)。 これは気候関連情報開示のターニングポイントになりました。 ISSBは、この基準をもって証券規制の世界にサステナビリティという視点を正式に持ち込み、資本市場に新たな情報開示規範を確立する先導役を果たしたのです。
G7とG20はISSB基準を支持し、証券監督者国際機構(IOSCO)も世界各地の証券規制当局がISSB基準を採用することを承認しました。 IOSCOは、ISSBのフレームワークをどのように適用するか検討に入るよう130の加盟機関に呼びかけました。IOSCO加盟機関は世界の金融市場の95%を占める一大勢力です。
ISSBは独立した立場で国際基準を策定する組織であり、国・地域や企業に何らかの要件を課すことはありません。 その基準は、あくまで市場に貢献し、国境を越えて一貫性のある比較可能な規制を確立する基盤を提供することが目的です。 とはいえ、すでに多くの国々で義務的報告でも、自主的報告でもISSB基準に則った報告が主流になりつつあります。 例えば、自主的報告の最も普及している基準「CDP気候変動質問書」は、2024年にISSBのガイダンスを反映して変更されました。
たとえISSB基準の採用が法的な義務ではない企業だとしても、それが規範となっていけば、取引先、投資家、その他ステークホルダーからISSB準拠をますます期待されるようになるはずです。
共通の基盤を築く
資本市場に焦点を絞ったサステナビリティ情報開示の在り方については、これまで多種多様で一貫性のない提言がいくつもあって分かりにくいという問題がありました。ISSBは、新しい基準を世に送り出して、その複雑な状況を統一された明確なロードマップに変えました。
何よりも重要な点は、ISSB基準のフレームワークが、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に具体的に盛り込まれている基本原則を土台にしていることです。このTCFD提言は、2017年に公表されて以来、急増する気候関連情報開示の実務と規制を方向づけてきました。 IFRS S1・S2は、気候変動開示基準委員会(CDSB)やサステナビリティ会計基準審議会(SASB)など、認知度が高く、よく使われる基準やガイダンスの原則を参考にして作成されています。 さらに IFRS S1・S2は、企業が欧州サステナビリティ報告基準 (ESRS)やグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)に基づく開示を統合するためのオプションも提供しています。ただし、これら既存の基準に基づく開示が投資家のニーズを満たすものであることが前提です。
このようにしっかりした土台の上に成り立ち、インクルーシブなアプローチを採用しているISSB基準は、従来の会計原則や証券取引法では「財務上マテリアル(重要)」とは定義されないものの、軽視できないサステナビリティの課題やインパクトについても扱うという、より積極的な報告の基盤としても機能します。 ISSBは、GRIとも、ESRSの策定を担うEFRAG(欧州財務報告諮問グループ)とも緊密に協力しながら、サステナビリティ報告の2本の柱―財務とインパクト―を効率的かつ効果的に調和させることに取り組んでいます。
TCFDからISSBへの移行
2017年、TCFDが発表した一連の提言を契機に気候関連財務リスク開示が世界的に活発になり、報告義務化に向けた今日のトレンドの基礎が築かれました。
TCFDフレームワークは、あらゆる法域(国・地域)とセクターに属する企業に適用され、気候インパクト評価を4つの基本領域:ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標に整理しました。
TCFDガイダンスが市場で広く使われるようになるにつれ、多くの国・地域が強制力のある開示要件を課す根拠としてTCFDガイダンスに注目するようになりました。 TCFDは、SECの気候関連情報開示規則、欧州のCSRD、カリフォルニア州のSB 261など、世界中の革新的な政策に影響を与えました。
TCFD提言は今も受け継がれています。 現在、世界中の多くの規制が、企業に対して気候関連財務リスクの報告時にTCFD提言を採用するよう定めています。 TCFDの遺産はISSB基準にも完全に組み込まれています。 2023年にISSB基準が公表された後、金融安定理事会は、TCFDを廃止し、気候関連財務リスクに関する世界共通基準の報告を支援する責任をTCFDからISSBに移行する計画を発表しました。 2024年1月1日、TCFDは正式に解散し、ISSBを監督するIFRS財団がその責任を引き継ぎました。 TCFD提言は今、ISSB基準へと進化し、市場や規制当局の期待もまた進化しています。
ISSB基準の決定的な特徴とは
つながり、適用範囲、包括性が三大特徴です。
ISSB基準を際立たせている重要な3つの特徴があります。
- つながり 気候関連および全般的サステナビリティデータは、財務情報開示と直接リンクしており、年次「一般目的財務報告書」と一緒に公表されます。 加えて、ISSB基準に従った気候関連情報報告のタイミングは財務報告と一致しています。
- 適用範囲。 ISSB基準の適用範囲は、短期・中期・長期の視点に立ったサステナビリティ関連のリスクと機会です。 基準はバリューチェーン全体に適用され、気候関連および全般的サステナビリティが企業価値に及ぼす影響について理解が深まるように設計されています。 また、前述した既存の基準の原則を組み込んでいます。
- 包括性。 ISSBフレームワークは、スコープ3と投融資先の排出量を含む、GHG排出量の包括的な報告が特徴です。 業界ごとに焦点を絞ってリスク、機会、指標を報告できるようになっています。 また、取締役会のガバナンスに加え、移行計画と移行目標についても、より詳細に開示することを求めています。 シナリオ分析、および現在の財務的影響と予想される財務的影響の定量評価を行い、その結果に基づいてレジリエンスも検討します。
IFRS S1とIFRS S2の軸となる要素とは
2つの基準はガバナンス、戦略、リスク、指標、目標に対応しています。
IFRS S1とIFRS S2は、気候関連情報開示の詳細なロードマップとしての役割を果たし、報告要件を策定する規制当局の指針となります。 ISSB基準の狙いは、財務上マテリアルなサステナビリティ情報を財務諸表と一緒に必ず同一報告パッケージに含めることを企業に浸透させることです。 ISSBは、両基準が会計要件とセットで使われることを意図しており、IFRS会計基準と共通の概念を共有しています。
IFRS S1は、企業が短期・中期・長期の時間軸で直面するサステナビリティ関連のリスクと機会について、投資家と共通の言語でコミュニケーションをとれるようにするためのフレームワークを提供するものであり、IFRS S2は、気候関連情報開示の具体的なガイドラインを規定するものです。
IFRS S1:サステナビリティ関連財務情報の開示に関する一般要求事項
第1のISSB基準、IFRS S1 - サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項は、一般目的サステナビリティ報告書を作成する際の指針となる包括的フレームワークと基本方針です。 その構成は、TCFDフレームワークの4本の柱に従っており、企業に次の情報の報告を求めています。
1) ガバナンス:サステナビリティ関連のリスクと機会をモニタリング、管理、監督するために用いるガバナンスのプロセス、統制、手続き
2) 戦略:サステナビリティ関連のリスクと機会を管理するためのアプローチ
3) リスク管理:サステナビリティ関連のリスクと機会を特定、評価、優先順位付け、モニタリングするために用いるプロセス
4) 指標と目標:サステナビリティ関連のリスクと機会に関係するパフォーマンス、企業が設定した目標または法律や規制によって達成が義務付けられている目標に対する進捗を含む
IFRS S2:気候関連の開示
第2のISSB基準、 IFRS S2 - 気候関連開示は、IFRS S1と一緒に使うことを意図して作成されており、気候に焦点を絞った内容です。 企業に気候変動がもたらす財務上のリスクを管理する方法について報告することを求めています。 例えば、異常気象によってサプライチェーンが被る損害のような物理的リスク、電気自動車に対する消費者需要の増加のような移行リスクです。
S1同様、S2もTCFDフレームワークが土台です。 戦略、リスク管理プロセス、気候関連リスク管理の指標について判断できる情報をステークホルダーに報告することを企業に求めています。
ISSB:企業に対する質問リスト
ガバナンス
- サステナビリティ・気候関連のリスクと機会を監督する責任は誰が負うか、その責任範囲は(委託事項、取締役会の権限、その他の方針など)?
- 監督組織に相応の技能があることをどのように判断するか? リスクと機会について監督組織はどのくらいの頻度で議論するか? 監督組織はどのように目標を設定し、進捗をモニタリングするか?
- 経営陣はサステナビリティ・気候関連のリスクと機会をどのように評価、処理するか? その役割を特定の管理職や委員会に委任しているか? 委任している場合、その管理職や委員会に対する監督はどのように行うか?
戦略
- 自社のビジネスモデル、戦略、キャッシュフロー、資金調達、資本コストに短期・中期・長期的な影響が及ぶと想定される気候関連のリスクと機会は何か?
- 想定されるリスクと機会は自社のビジネスモデル、バリューチェーン、意思決定にどう影響するか?
- 想定されるリスクと機会に対応するための移行計画はどのようなものか?
- 自社の財務状態、財務パフォーマンス、キャッシュフローはどのような影響を受けるか(報告期間、短期、中期、長期に)? 想定されるリスクと機会を財務計画にどのように組み込むか?
- 気候関連の物理的リスクと移行リスクに対する戦略にどの程度のレジリエンスがあるか?
- 自社のレジリエンスをどのように分析したか? 報告企業はシナリオ分析の実施と結果・手法の説明が求められる。
リスク管理
- サステナビリティ・気候関連のリスクと機会を特定、評価、管理するためにどのようなプロセスを採用しているか?
- そのプロセスでどのようなデータや要因を考慮するか? サステナビリティ・気候関連リスクにその他のリスクと比較して優先順位をつける方法は?
- そのプロセスはリスク全般の管理プロセスにどのように統合されているか? 全般的な経営管理プロセスには?
指標と目標
- 気候関連のリスクと機会をどのように算定、管理、モニタリングするか? パフォーマンス評価は? 目標の設定と進捗の追跡は?
- スコープ1、2、3の温室効果ガス絶対総排出量は?
- 排出量は「GHGプロトコル事業者排出量算定報告基準」に準拠して算定し、国・地域ごとの規則が別途ある場合のみ例外とする。 データ収集、仮定、推定に使った技法を選択(または変更)した経緯と理由も開示する。
- スコープ2の算定には必ず「ロケーション基準」手法を使う。
- スコープ3については、算定に含める排出カテゴリも考慮し、投資家が算定手順を理解できるような情報(算定方式と推定値の説明、バリューチェーンの特定の活動から収集した「一次データ」に基づく推定値の割合、検証済みデータに基づく推定値の割合)も一緒に提供する必要がある。
- 投融資先の排出量はあるか? 資産運用、銀行業務、保険業務を行っている企業の場合、必ず金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)に基づいて投融資先の排出量を開示する。
- 気候変動が自社の財務に及ぼす影響はどのようなものか? 移行リスクと物理的リスクに脆弱な資産や事業活動の量と割合はどの程度か? 一方、気候関連の機会に対応する量と割合は? 気候関連のリスクと機会にどのように、いくらの資金を配分するか?
- どのような気候関連の目標を設定しているか? 目標に対する進捗の測定方法は?
ISSB基準が企業に及ぼす影響
ISSB基準は報告を合理化し、データの水準を引き上げるためにあります。
世界中の投資家が、質・透明性ともにより高い水準のサステナビリティ報告を求めている今、世界共通の一貫性と比較可能性を確立する基盤が不可欠です。 ISSBは、新しい基準を策定することで、この基盤を築きました。 ISSBは、IFRS S1・S2を策定する過程で、世界中のステークホルダーと協力して、サステナビリティと気候関連の情報のなかでも投資家が一貫して受け取る必要のある種類を決定しました。
ISSB基準は気候関連情報開示に高い水準を定めています。 企業に詳細なシナリオ分析とスコープ3排出量の算定も求めています。 これを踏まえると、企業側に気候関連データのトレーサビリティ、透明性、信頼性を保証するシステムが整備されていることが必須になります。
この要求を負担に感じる企業もあるかもしれませんが、大きなメリットがあることも分かるでしょう。 重複する報告を減らしたISSB基準は、最終的に、より効率的で費用対効果の高い、つまり時間もリソースも節約できる情報開示になるはずです。 企業が国境を越えて共通言語でサステナビリティ問題を語れば、環境問題への取り組みを競争優位性につなげることができます。
ISSBは、既存の報告フレームワークからの円滑な移行を促進することを目指しています。 すでにTCFD提言やSASBスタンダードを採用している企業なら、ISSB基準は両フレームワークを下敷きにしているため、ISSB基準に基づいて開示するのに有利な立場にあります。
ISSBの「スケーラブルソリューション」とは
ISSB基準は段階的な基準対応を認めています。
ISSBは、基準を策定する過程で、企業にとって特にハードルの高い要件を2つ特定しました。1)シナリオ分析、2)スコープ3報告です。 ISSBは、企業が(特に新興経済国の企業が)このハードルを克服できるようにスケーラブル(取り組みを拡大できる)ソリューションと段階的アプローチを取り入れました。
ISSBはまた、「過度のコストや労力をかけずに、報告日時点で入手可能な合理的かつ裏付け可能な情報」に基づき開示してよいというIFRSで長年の実績がある考え方を踏襲しています。
この考え方は、初めて報告という課題に取り組む企業の負担をある程度和らげますが、期待水準を下げるものではありません。 企業は報告能力を高めながら報告水準を上げることが求められます。 例えば、シナリオ分析の場合、IFRS S2は気候関連のリスクと機会を企業によっては定性的・叙述的に分析することから始めてよいと認めています。 データの質が高まり、シナリオ分析をめぐる市場の成熟が進み、報告企業の能力が向上するのに合わせて、定量的かつ包括的なシナリオ分析へと取り組みを広げられるようになっています。
スコープ3報告についても、以下のようにISSBは段階的に取り組みを拡大するアプローチを採用しています。
- スコープ3については、企業がISSB基準の報告を開始する1年目以降、段階的に要件を適用する。
- バリューチェーンの会計期が異なる企業から提供されるデータについては推定値の使用を認める。
- 現時点で異なる算定規則を採用している企業に対して移行期間を認める。
一方、ISSBは、投資家に役立つ開示も意識して、企業にスコープ3の算定手順、推定値、仮定について詳細を報告することを求めています。 例えば、スコープ3排出量の算定が現実的に不可能だと判断した企業は、スコープ3排出量に対する管理方法や「考え方」を説明しなければなりません。
最後に、ISSBは規制当局(国内規制作成者)に「セーフハーバー(免責・減責)」条項の採用を促す予定です。これは、スコープ3報告という避けては通れない課題に取り組む企業を“ソフトランディング”させるためです。
サステナビリティ報告の将来動向に備える
企業は気候関連データの透明性、トレーサビリティ、信頼性を徹底する必要があります。
ISSB基準の採用は、気候関連情報開示とサステナビリティ報告のターニングポイントになります。 今後数年で、何らかの形でISSB基準の影響を受けない企業はないくらいになるでしょう。規制が課されるかもしれないし、自主的な報告を開始するかもしれません。ステークホルダーの期待が変化することも十分あり得ます。 この移行に備える第一歩は、IFRS S1・S2要件の全体像をしっかり理解することです。
何より重要なのは、気候関連データを管理するための確かなシステムを築くことです。 ISSBの排出量報告要件が複雑であることを考えると、自動化されたGHG排出量の算定・報告(炭素会計)は今や必須と言えます。炭素会計を自動化すれば、手作業の会計では避けがたい間違いや非効率性をなくせます。 気候関連情報開示の担当チームは、同じ最新の数字を使って仕事をしているのか知る必要があります。チームのデータの透明性、トレーサビリティ、信頼性に確信をもてることも必要です。
せっかくサステナビリティに取り組んでいるのなら、そのメリットを最大限に享受したいはずです。テクノロジーはそれもサポートします。 GHG排出量の算定・報告プロセスがシンプルになれば、浮いた時間とリソースを脱炭素化を加速させる施策に振り向けることができます。ひいてはそれが(ポジティブな)気候インパクトを拡大し、企業の競争力を強化することになります。
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ISSBに関するよくある質問
ISSBのような報告基準に従う場合、理解すべき点はいくつもあります。 よくある質問にお答えします。
ISSB基準はいつ発効したのですか?
最終的なS1とS2の基準は、2024年1月1日から、法域(国・地域)と組織規模にかかわらず、すべての報告企業に適用されることになりました。
ISSB基準はどこで義務化されていますか?
ISSBは独立した立場で国際基準を策定する組織です。 どの法域や企業に対しても要件を課す権限はありません。 ただし、証券監督者国際機構(IOSCO)も世界各地の証券規制当局がISSB基準を採用することを承認しており、ISSB基準は今や規制フレームワークのベースラインとしての役割を果たしています。 ISSB基準を用いて開示規則を策定することを決めた法域は、それぞれ適用対象の企業や発効日を定めることになります。
ISSB基準を採用できる組織は?
ISSB基準は任意採用もできるので、企業規模の大小、上場・非上場を問わず、報告基準として採用できます。 ISSBは、小規模事業者や新興経済国にも普及してこそ本来の世界基準になると認識しており、すべての企業の報告能力を高めることに注力しています。
新興経済国や発展途上国が新基準の導入によってメリットを得られるように、これら経済圏の企業が段階的に基準に準拠した報告を進めるための緩和措置とガイダンスのパッケージがISSBから提供される予定です。
これまでTCFDフレームワークで報告してきた場合はどうなりますか?
ISSB基準はTCFDフレームワークを土台にしているので、これまでTCFDに従って報告していた企業は混乱なく移行できるはずです。 また、ISSB基準はより広範なフレームワークなので、ISSB基準を適用する企業は、TCFDなどの開示要件も満たすことになります。
ISSBのマテリアリティの定義は?
ISSBのマテリアリティ(重要性)の定義はIFRSの定義を踏襲しています。省略したり、曖昧にしたり、誤って提示したりすれば、投資判断に影響を及ぼすと合理的に推測できる場合、その情報を「マテリアル(重要)」と見なします。 言い換えれば、情報の重要性を投資家目線で判断するということです。この定義は、IFRSのサステナビリティ基準に沿った情報開示すべてに適用されます。
ISSBは報告の保証を義務付けていますか?
ISSB基準では保証は必須ではありません。 しかし、ISSB基準が各地の規制や法的枠組みに採用されるにつれ、ある程度の保証が必要になるでしょう。 ISSB基準は保証を前提にした報告書作成を意図して策定されています。 国際監査・保証基準審議会(IAASB)は、サステナビリティ関連情報開示に対するIAASB保証基準の策定を進めており、ISSBとも協議しています。