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炭素会計 基礎講座

細かい分類

Updated: 
December 6, 2024
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Overview

スコープ1

前述したように、GHGプロトコルとPCAFでは、すべての排出量をスコープ1、2、3に分類しています。

各スコープの内容と算定方法を詳しく見ていきましょう。また、企業が自社の排出量を把握することの重要性についても解説します。

スコープ1排出量の算定

スコープ1排出は、報告組織が所有する排出源から発生する直接排出です。

Scope 1 direct emissions from the reporting company with examples

スコープ1には、以下の排出が含まれます。

  • 燃料の使用(固定燃焼):報告企業が所有または運営する建物や装置・設備での燃料の燃焼による排出。例えば、工業工程で使用するボイラーやその他の機械を動かすための燃料(天然ガスやディーゼルなど)の燃焼による排出
  • 漏洩排出:報告企業が所有または運営する装置・設備(空調や冷凍装置など)からの温室効果ガスの漏れによる排出
  • 移動燃焼:報告企業が所有またはリースしている車両や輸送装置(社用車など)のために購入した燃料の燃焼による排出
  • 工業プロセス排出:燃料の燃焼を除く、物理変化または化学変化を伴う工業工程(セメントやアンモニアの製造など)からの排出

敷地内の活動から生じる排出は企業の明確な支配下にあることから、スコープ1排出量は企業にとって最も管理・低減しやすい排出量と言えます。

スコープ2

スコープ2とスコープ3は、どちらも間接排出です。 まず、スコープ2を見てみましょう。スコープ2排出は、報告企業が購入したエネルギー(電気、ガス、蒸気、温熱、冷熱など)がつくられる際に発生する間接的な排出です。

購入したエネルギー

購入したエネルギーは、他の間接排出源とは別の独立したスコープを割り当てられています。なぜなら他の間接排出源に比べ、企業自身がよりコントロールしやすい排出源だからです。 購入したエネルギーからの排出量は、世界全体の排出量の約40%を占めています。その一方で、エネルギー効率対策によって最も簡単に削減できる排出量のひとつであると考えられています。 言い換えると、自社の排出量をいち早く削減したい企業にとって、スコープ2対策が非常に重要になってくるのです。

The ceiling of a facility with rows of LED lighting

例:

企業は、敷地内の照明をLEDに切り替えるなど、エネルギー効率対策を実施することで、購入したエネルギーの消費を直接削減することができます。つまり、購入したエネルギーからの排出は、物理的にはエネルギー供給事業者の敷地内で発生しているものの、企業自身の努力で削減可能だということです。

再販目的で購入したエネルギーは、スコープ2排出量には含まれないことに注意してください。再販目的で購入したエネルギーは、スコープ3の「燃料・エネルギー関連活動」に該当します。 これについては、このモジュール内で後述します。

スコープ2排出量の算定に必要なデータは、比較的簡単に入手可能です。例えば、光熱費の請求書を見れば、購入したエネルギーを確認できます。

Examples of scope 2 emissions, upstream activities

スコープ2排出量の算定

ほとんどの企業は、ロケーション基準手法とマーケット基準手法という2つの手法で、スコープ2排出量を報告しなければなりません。 これを「二元報告」(dual reporting)と言います。

ロケーション基準手法

ロケーション基準手法は、スコープ2排出量を報告するすべての企業に義務づけられています。 これは、企業に物理的に供給されるエネルギーから大気中に排出される温室効果ガス量を概算する手法です。 エネルギーが消費される場所の系統からのデータを用いて算出します。

★コメント(2)★再生可能エネルギー(再エネ)については、ロケーション基準手法では系統の平均排出係数を用いますが、現地および直接供給の場合にのみ個別の排出係数を用います。 つまり、再エネの供給源が増えれば、その分系統の数も増えてくる、という手法です。 再エネ購入は、系統上の再エネの増加につながるかもしれませんが、ロケーション基準手法ではその大部分は考慮されません。また、再エネの直接供給も必ずしも考慮に含まれません。

ロケーション基準手法で算定した総排出量を報告することは、すべての企業にとって重要です。それにより、市場の影響を排除した上で、事業活動の物理的な環境負荷を理解することが可能になるからです。 しかしほとんどの企業は、マーケット基準手法で算定した総排出量に基づいて目標設定をすることになるでしょう。その方が、より柔軟性をもって目標達成を目指せるためです。

マーケット基準手法

マーケット基準手法は、組織が購入したエネルギーからの排出量を、エネルギーの購入方法および関連する属性に基づいて算定します。

排出量は、購入における意思決定と密接に関連しています。購入における意思決定は、契約証書によって裏付けられます。契約証書とは、再エネの属性(ゼロエミッションなど)を訴求するための契約です。 契約の内容は、地域や市場によって大きく異なります。

契約証書がない場合は、供給事業者の平均排出係数や残余ミックス排出係数を用いて排出量を算定し、マーケット基準手法での総排出量に含める必要があります。 供給事業者の排出係数も残余ミックス排出係数もない場合は、ロケーション基準手法の排出係数を使用することができます。

契約証書

マーケット基準手法で使用することのできる契約証書の例を以下に挙げています。

Energy Attribute Certificates
Power Purchase Agreement
Supplier Specific Contract

スコープ3

スコープ3排出は、スコープ2に含まれないすべての間接排出が該当し、報告企業のバリューチェーン全体で発生します。 報告企業の活動の結果として生じるものの、報告企業の支配が直接及ばない排出です。

多くの国や組織でスコープ1と2の排出量報告が義務づけられている一方、スコープ3の排出量報告は任意とされる場合が一般的です。

CDPの「グローバル・サプライチェーン・レポート 2021」によると、企業のサプライチェーンにおける排出量は、自社の直接事業からの排出量の11.4倍に上ります。

スコープ3排出は、ほとんどが組織の支配が直接及ばないところで発生するため、算定が複雑かつ困難です。 また算定するには、包括的なデータ収集を行い、正確な情報を入手する必要もあります。 パーセフォニの製品なら、他組織からのデータ収集を合理化できるため、スコープ3排出量の報告を検討している組織のお役に立てるでしょう。

GHGプロトコルでは、スコープ3排出を15のカテゴリに分類しています。

Scope 3_KE_NOPROCESS_.png

Each category has a set of activity-specific methodologies to measure emissions.

Cat4v4_NOPROCESS_.png

例:

カテゴリ4「上流の輸送と流通」では、「燃料法」「金額ベース手法」「距離ベース手法」という3つの算定方式のいずれかを用いて排出量を算定することができます。

組織はスコープ3の算定に当たり、3つの判断をしなければなりません。1)15のカテゴリのうち自組織に関連するのはどれか、2)何を算定する必要があるか、3)入手可能なデータや算定結果の使用目的を踏まえ最適な算出方法はどれか、です。