「CSRDの開示要件について知りたい」と調べている日本企業の方も、増えているのではないでしょうか。
EUは、2023年に企業の非財務情報開示に関する新たな規則であるCSRD(企業サステナビリティ報告指令)を導入しました。
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日本企業にとっても、CSRDへの対応は喫緊の課題となっています。グローバルに事業を展開する日本企業は、CSRDの開示要件を満たす必要性を確認し、準備を進めなければなりません。
本記事では、CSRDの概要から、日本企業が開示要件を満たすための具体的な手順まで、実務的な観点から詳しく解説します。
最後までお読みいただき、自社に必要なCSRD対応を把握するためにお役立てください。
1. CSRDとは?基本の確認
CSRDは、企業に対して、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する情報開示を義務付ける新たな規則です。従来のNFRDから大幅に開示要件が強化されています。
まずは基本事項を確認しましょう。
- CSRDとは何か
- CSRDの目的
- 従来のNFRDとの違い
- 開示対象となる企業・適用開始時期
- CSRDの日本企業への影響
1-1. CSRDとは何か
CSRDは、Corporate Sustainability Reporting Directive(企業サステナビリティ報告指令)の略称です。
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EU域内の一定規模以上の企業に対し、サステナビリティ情報の開示を義務付ける新たな規則として、2022年12月16日にEU官報に掲載され、2023年1月5日に発効しました。
CSRDでは、報告基準であるESRS(European Sustainability Reporting Standards:欧州サステナビリティ報告基準)に基づいた開示が求められます。
1-2. CSRDの目的
CSRDの目的としては、以下が挙げられます。
【CSRDの目的】
- 企業のサステナビリティ情報を比較しやすくする:ESRSに基づく標準化された開示により、投資家などのステークホルダーが企業のサステナビリティへの取り組みを適切に評価できるようになります。
- サステナビリティ情報と財務情報の関連性を明確にする:サステナビリティ情報を財務報告書と同時に開示すれば、企業価値創造におけるサステナビリティの位置付けを明確にできます。
- グリーンウォッシュを防止する:グリーンウォッシュ(企業が実際以上に環境に配慮しているように見せかける行為)を防止するために、第三者による保証を義務付けています。企業によるサステナビリティ情報の不適切な開示を防ぎます。
- EUのグリーンディールを推進する:企業のサステナビリティ情報の「見える化」を通じて、EUが目指すグリーンディール(環境と経済の好循環を目指す成長戦略)を後押しする役割を担っています。
CSRDは企業経営において、サステナビリティを重要な要素と位置付ける新たな規則体系といえるでしょう。
1-3. 従来のNFRDとの違い
CSRDの前身となるのが、2014年に発効されたNFRD(Non-Financial Reporting Directive:非財務情報開示指令)です。
CSRDの発効によって何が変わったのか、整理しておきましょう。
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【CSRDとNFRDのおもな違い】
- 対象企業の拡大:NFRDが対象としていたのは一定規模以上の大規模企業などでしたが、CSRDではその対象が大幅に拡大されました。
- 開示情報の拡充:NFRDが求めていた情報は定性的な記述が中心でしたが、CSRDではより詳細な定量データの開示が求められるようになりました。
- 報告基準の具体化:NFRDでは統一的な報告基準が定められていませんでしたが、CSRDではESRSに基づく開示が義務付けられました。
- 保証の義務化:NFRDでは第三者保証は任意でしたが、CSRDでは一定の情報について保証の取得が義務化されました。
- 企業のサステナビリティ経営の促進:虚偽の情報開示などに対する罰則が強化され、企業のサステナビリティ経営の促進につながることを期待されています。
このように、CSRDはNFRDから大幅に開示要件が強化されたものとなっています。
NFRDの枠組みのもとでサステナビリティ情報開示に取り組んできた企業にとっても、CSRDへの移行には相応の準備が必要です。
1-4. 開示対象となる企業・適用開始時期
CSRDの開示対象となるのは、EU域内で事業を行う一定規模以上の企業です。
日本企業も、EU域内に上場子会社や一定規模以上の子会社・支店などを有する場合、CSRDの対象となる可能性があります。
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出典:日本貿易振興機構(JETRO) 「CSRD 適用対象日系企業のための ESRS 適用実務ガイダンス」
【CSRDの適用対象企業・適用開始時期】
(1)2024年1月1日以降に開始する会計年度から報告(2025年報告開始)
- すでに非財務情報開示指令(NFRD)の対象である大規模上場企業(従業員500人超)や銀行など
(2)2025年1月1日以降に開始する会計年度から報告(2026年報告開始)
- NFRD対象外の大企業
- 零細企業を除くEU域内上場企業(中小企業除く)←在欧日系子会社が該当する可能性が高い
(3)2026年1月1日以降に開始する会計年度から報告(2027年報告開始)
- EU域内で上場している中小企業(零細企業除く)
- 小規模かつ複雑でない信用機関
- キャプティブ保険会社
(4)2028年1月1日以降に開始する会計年度から報告(2029年報告開始)
- EU域内に子会社または支店などを有して重要な活動を行い、EU域内売上高1億5,000万ユーロ超のEU域外企業(一定条件あり)←日本の最終親会社を頂点とする連結グループが該当する可能性が高い
自社がCSRDの対象となるか、いつから適用されるのかを早めに確認し、必要な対応を進めることが重要です。
上記の詳細は、日本貿易振興機構(JETRO)の「CSRD 適用対象日系企業のための ESRS 適用実務ガイダンス」にて解説されています。
1-5. CSRDの日本企業への影響
日本企業にとって、CSRDは自社の経営に大きな影響を及ぼす可能性のある規則です。これから適用範囲が段階的に広がるにつれて、その影響も大きくなります。
【CSRDが日本企業に与える影響】
- 情報開示の負担増大:ESRSに基づく詳細な開示には、相応のリソースが必要になります。とくに初年度の対応負荷は大きくなります。
- サプライチェーンへの波及:EU域内の顧客企業から、CSRDに準じた情報開示を求められるケースが増えるでしょう。
- ステークホルダーの評価への影響:機関投資家をはじめとするステークホルダーがCSRDでの開示情報を重視するようになれば、日本企業の評価にも影響が及ぶ可能性があります。
- 規制当局の監視の強化:CSRDの施行を機に、日本でもサステナビリティ情報開示に関する規制の議論が本格化する可能性もあります。
- コストの増加:上記の影響への対応には、体制の整備やデータ収集のためのシステム導入など、一定のコストがかかることが予想されます。
一方で、CSRDへの適切な対応は、グローバルな市場で戦う日本企業の競争力強化にもつながります。サステナビリティ経営の高度化は、長期的な企業価値の向上に資するものだからです。
CSRDを単なる規制対応として捉えるのではなく、自社のサステナビリティ経営を見直し、高度化していくための機会として活用することが望ましいでしょう。
参考:経済産業省「サステナビリティ関連データの効率的な収集及び戦略的活用に関する報告書(中間整理)概要版」
2. CSRD開示要件の概要
前述のとおり、CSRDは企業に対し、サステナビリティに関する情報を包括的に開示することを求めるものです。
具体的には、環境・社会・ガバナンスの3つの柱に基づいて情報開示を行う必要があり、企業がサステナビリティに与える影響と、サステナビリティが企業に与える影響の両方(ダブル・マテリアリティ)を開示することが求められます。
以下で概要を確認しましょう。
- 環境
- 社会
- ガバナンス
- ダブル・マテリアリティの概念
2-1. 環境
CSRDの「環境」分野では、企業が自らの事業活動が環境に与える影響を評価し、その改善に向けた取り組みを明確に開示することが求められます。
これは、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に準拠して開示を行うものであり、気候変動、資源利用、汚染、生物多様性などのテーマを包括的にカバーしています。
【CSRDの環境分野の主要開示要件】
- 気候変動:企業の事業活動による温室効果ガス(GHG)排出量の測定と報告が必要です。また、気候変動が事業に及ぼすリスクや機会を評価し、それをもとにした中長期的な戦略や削減目標を明確に示します。
- 資源利用と循環型経済:企業が利用する資源(エネルギー・水・原材料など)と、その効率的な管理に関する方針を開示します。また、廃棄物管理やリサイクルに関する取り組みの状況も報告が必要です。
- 汚染:大気や水、土壌の汚染物質に関するデータを報告し、これらの排出を抑制するための対策についても説明します。
- 生物多様性と生態系:事業活動が自然環境や生物多様性に与える影響の評価と、それを保護・回復するための施策や目標を示します。
環境情報の開示には、定量的データとともに、使用された測定方法や前提条件を併せて報告し、透明性と比較可能性を確保することが求められます。
2-2. 社会
CSRDの「社会」分野では、企業がステークホルダーに与える影響を多面的に評価し、その結果を報告することが求められます。
これは、人権・労働条件・地域社会への影響など、幅広いテーマを対象としています。
【CSRDの社会分野の主要開示要件】
- 人権:人権方針の策定状況、人権リスクの特定とその管理、是正措置の進捗状況などを開示します。とくに、バリューチェーン全体での人権デューディリジェンス(人権への影響を特定・評価し、防止・軽減する継続的な取り組み)の実施状況が重要です。
- 労働条件:企業は従業員の権利保護に関するポリシーと実施状況(例:結社の自由・公正な賃金・差別の防止など)を報告する必要があります。
- ダイバーシティ&インクルージョン:従業員の多様性を推進するための取り組みを開示します。具体的なデータとして、従業員構成の多様性や推進方針の進捗状況が含まれます。
- 地域社会:企業活動が地域社会に与える影響や、その貢献の内容を報告します。
報告では、定量的なデータだけでなく、具体的な施策の有効性に関する分析も求められます。
2-3. ガバナンス
CSRDのガバナンス分野は、企業の経営体制、透明性、説明責任を強化するための情報開示を求めています。
これは、企業が持続可能な成長を実現するための基盤を明らかにするものです。
【CSRDのガバナンス分野の主要開示要件】
- 取締役会:取締役の構成・選任プロセス・多様性に関するポリシーを明示します。また、取締役会の実効性や監督機能の評価結果を開示します。
- 役員報酬:役員報酬の方針や構造(例:業績連動報酬の仕組み)、報酬額、報酬制度と経営戦略の整合性を示します。
- リスク管理とコンプライアンス:企業のリスク管理体制、コンプライアンス違反防止の取り組み、リスク対応策について具体的に報告します。
- 内部統制:財務報告や法令遵守を支える内部統制システムの構築・運用状況を明確にします。
CSRDは、ガバナンスに関する情報開示を通じて、企業がどのように透明性を高め、長期的な信頼を構築しているかを示すことを重視しています。
参考:日本貿易振興機構(JETRO)「CSRD 適用対象日系企業のための ESRS 適用実務ガイダンス」
2-4. ダブル・マテリアリティの概念
ダブル・マテリアリティとは、企業が開示すべきサステナビリティ情報を評価する際の重要な枠組みであり、次の2つの視点を統合的に考慮します。
- 環境や社会が企業に与える影響(Financial Materiality / アウトサイドイン):環境や社会的な要因が、企業の財務パフォーマンスや事業価値にどのような影響を及ぼすかを評価する視点です。たとえば、気候変動による規制強化や気象リスクが企業のコスト構造や市場競争力に与える影響が該当します。
- 企業が環境や社会に与える影響(Impact Materiality / インサイドアウト):企業の活動が、環境や社会全体に対してどのような影響を及ぼすかを評価する視点です。具体的には、温室効果ガス排出やサプライチェーンにおける労働環境の改善が地域社会や地球環境に与える影響を測るものです。
CSRDでは、この2つの視点を同時に考慮する「ダブル・マテリアリティ」の適用が義務化されており、企業は財務的なリスクと社会的な影響の双方を評価・開示する必要があります。
3. CSRDの開示要件を満たすための準備
CSRDへの対応は容易ではありませんが、適切な準備によって、スムーズな開示を実現できます。ここでは、CSRDの開示要件を満たすための4つのステップを解説します。
- ステップ1:ESG情報を収集する
- ステップ2:マテリアリティ評価を行う
- ステップ3:ESRSに基づいた報告書を作成する
- ステップ4:第三者保証を受ける
3-1. ステップ1:ESG情報を収集する
1つめのステップは「ESG情報を収集する」です。
自社がCSRDの対象と判明したら、早期にESG情報の収集に着手しましょう。
【ESG情報を効果的に収集するためのヒント】
- 社内の関連部門の特定:サステナビリティ推進部門・経理部門・人事部門など、ESG情報に関わる部門を特定し、協力を仰ぎます。
- 社内の情報収集体制の構築:各部門の担当者を明確にし、情報収集のための会議体を設置します。データ管理のためのシステム導入も検討しましょう。
- サプライヤーへの協力要請:バリューチェーンの温室効果ガス排出量算定など、サプライヤーからの情報提供が不可欠な項目については、早めに協力を要請することが重要です。
- 外部の専門家の活用:ESG情報の収集と開示には高度な専門性が求められます。必要に応じて、コンサルティング会社などの外部リソースを活用することも有効です。
- ESRSとの整合性の確認:収集したESG情報がESRSの開示要求事項を満たしているかどうかを確認し、過不足がある場合は追加の情報収集を行います。
情報収集には一定の時間とコストがかかります。その前提を持ち、サステナビリティ経営の高度化につながる重要なプロセスと捉えて必要な投資を行います。
関連部門の理解と協力を得ながら、着実に進めていきましょう。
3-2. ステップ2:マテリアリティ評価を行う
2つめのステップは「マテリアリティ評価を行う」です。
CSRDへの対応を進める中で重要になるのが、自社にとってのマテリアリティ(重要課題)を特定することです。
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【マテリアリティ評価の進め方】
- サステナビリティ課題の抽出:CSRDで求められる開示項目を参考に、自社に関連する環境・社会・ガバナンス上の課題を幅広く抽出します。
- 課題の重要性の評価:抽出した課題について、ステークホルダーへの影響度と自社への影響度の2軸で評価を行います。ESRSが重視する項目を考慮することも大切です。
- マテリアリティ・マトリックスの作成:上記の評価結果をマッピングし、優先的に取り組むべき課題を「マテリアリティ」として特定します。
- ステークホルダーとの対話:マテリアリティの妥当性について、従業員、顧客、取引先企業など、企業活動に関わるステークホルダーとの対話を通じてフィードバックを得ることが望ましいでしょう。
- 経営戦略との統合:特定したマテリアリティを自社の経営戦略に組み込み、KPIと目標を設定します。
マテリアリティ評価のプロセスを通じて、自社のサステナビリティ課題に対する理解が深まり、CSRDへの対応の方向性が明確になります。
一方で、マテリアリティは固定的なものではありません。ステークホルダーの期待や社会環境の変化に応じて、見直していくものです。
継続的な改善を重ねながら、自社のサステナビリティ経営のレベルを高めていくことが重要です。
3-3. ステップ3:ESRSに基づいた報告書を作成する
3つめのステップは「ESRSに基づいた報告書を作成する」です。
情報収集やマテリアリティ評価を経て、いよいよ具体的な報告書作成に取り組みます。ESRSが求める情報開示項目に準拠した報告書の作成は、CSRD対応の中核となるプロセスです。
以下でポイントのみご紹介しますが、実務的な留意点や基準の要約については、JETROの「CSRD 適用対象日系企業のための ESRS 適用実務ガイダンス」が参考になります。
【ESRSに基づく報告書作成のポイント】
- 開示情報の特定:ESRSでは、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の各領域で詳細な基準が定められています。とくに、E1(気候変動)、S1(労働者に関する影響)、G1(ガバナンス構造)などの基準に基づき、開示が求められる項目を特定します。
- マテリアリティ評価の活用:ダブル・マテリアリティの概念に基づき、企業が環境・社会に与える影響と、それらが企業に与える影響の両方を評価します。これをもとに、ESRSの基準に沿った重要課題を抽出し、報告書の内容を構成します。
- 財務報告との整合性の確保:ESRSは、財務報告との統合を重視しています。企業価値への影響を一貫した形で説明するため、財務データとサステナビリティ情報の整合性を確保する必要があります。これには、関連部門間でのデータ共有や連携が不可欠です。
- データの信頼性と透明性の確保:開示情報の正確性を担保するため、収集したデータの検証を行います。スコープ1、スコープ2、スコープ3の温室効果ガス排出量(*1)など、定量的データについては、測定方法と前提条件を報告書内で明示することが求められます。
*1:「スコープ1・2・3」とは、温室効果ガス排出量を直接排出(スコープ1)、エネルギー起源の間接排出(スコープ2)、その他の間接排出・バリューチェーン全体(スコープ3)の3つの範囲に分類した基準を指します。
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(詳しくは、こちらの記事もあわせてご覧ください。スコープ 1 2 3)
なお、報告書の作成は、財務報告に匹敵する高度な専門性が求められます。
自社の開示体制の成熟度に応じて、コンサルタントの活用など、外部の専門家の知見を活用することも検討しましょう。
3-4. ステップ4:第三者保証を受ける
4つめのステップは「第三者保証を受ける」です。
CSRDでは一定の開示情報について、独立した第三者による保証(Assurance)を受けることが求められています。
【第三者保証に向けた準備のポイント】
- 保証の範囲の特定:CSRDでは、ESRSに定められた開示項目についての保証が義務付けられています。自社の報告書について、どの範囲までを保証対象とするかを特定する必要があります。
- 保証水準の理解:第三者保証には「合理的保証(Reasonable Assurance)」と「限定的保証(Limited Assurance)」の2つのレベルがあります。現行のCSRDでは「限定的保証」が求められており、今後段階的に「合理的保証」への移行が予定されています。
- 保証業務の実施者の選定:保証業務は独立した第三者によって実施される必要があります。おもに監査法人や、サステナビリティ関連の専門的保証サービス提供事業者が担います。信頼性と専門性を兼ね備えた実施者を選定することが重要です。
第三者保証への対応には、財務諸表監査と同等の準備作業とリソースが必要となります。計画的に進めることが大切です。
4. CSRD対応を効率化するGHG排出量算定ツール
CSRDへの対応において、最も負荷が大きい作業の1つが温室効果ガス(GHG)排出量の算定です。
とくに、サプライチェーン排出量(スコープ3)の算定には、膨大な情報収集とデータ処理が必要となります。ここでは、GHG排出量算定の負荷を大幅に軽減するITツールについて紹介します。
- GHG排出量算定ツール導入のメリット
- ツールを選ぶ際のポイント
- まずは無償版でスタートする
4-1. GHG排出量算定ツール導入のメリット
GHG排出量算定ツールを活用すると、CSRD対応の負荷を大幅に軽減しつつ、その先のサステナビリティ経営高度化につなげることも可能です。
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ツール導入のメリットとして、以下が挙げられます。
【GHG排出量算定ツール導入のメリット】
- 業務の効率化:データの収集・集計・加工などの作業を自動化し、GHG排出量算定にかかる工数を大幅に削減できます。
- 算定精度の向上:システムによる計算処理により、人的ミスを防ぎ、算定結果の信頼性を高められます。正確なデータに基づく意思決定が可能となります。
- 社内外との円滑なコミュニケーション:算定結果をビジュアル化してレポート出力する機能を利用すれば、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションが円滑になります。情報共有とフィードバックの取得がスムーズに進みます。
- 将来の規制変更への対応力:ツールのアップデートにより、将来の算定・報告ルールの変更に柔軟に対応できます。規制変更のたびに業務を一から見直す必要がなくなります。
4-2. ツールを選ぶ際のポイント
GHG排出量算定ツールは複数のベンダーが提供していますが、自社に最適なツールを選ぶことが大切です。
【ツール選定の際のチェックポイント】
- グローバル対応力:海外を含むサプライチェーン全体の排出量算定が必要な場合は、多言語対応や各国の排出係数対応など、グローバルな対応力を備えたツールが不可欠です。国境を越えた情報収集とデータ処理がスムーズに行えることを確認しましょう。
- 将来の拡張性:将来的なCSRD対応の深化や、新たな法規制への対応なども見据え、機能拡張できるツールを選びます。追加要件にも迅速に適応できる設計になっているか、チェックしましょう。
- カスタマイズ性:自社固有の算定ルールへの対応や、社内の既存システムとの連携など、ツールのカスタマイズ性の高さは重要な選定基準となります。柔軟性に優れたツールを選びましょう。
- セキュリティ:機密性の高い情報を扱うため、データ保護に関するセキュリティ対策が十分かどうかをチェックしましょう。情報漏えいリスクを最小限に抑えることが重要です。
- サポート体制:トラブル発生時の対応や、ツール活用のサポートが充実しているかを確認しましょう。円滑な運用に欠かせないものです。
4-3. まずは無償版でスタートする
GHG排出量算定ツールの導入は、自社にとって大きな投資判断となります。まずは無償版を活用し、ツールの有用性を見極めることをおすすめします。
当社パーセフォニは、GHG排出量算定プラットフォームの世界的リーディングカンパニーだからこそ、GHG排出量算定ツールを無償でご提供しています。
また、CSRDのレポーティング機能も提供しているため、これからCSRD対応に取り組む企業の方は、以下のリンクより詳細をご確認ください。
5. まとめ
本記事では「CSRDの開示要件」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
最初にCSRDの基礎知識として以下を解説しました。
- EU が導入した新たな企業サステナビリティ報告指令
- 環境・社会・ガバナンスに関する情報開示を企業に義務付ける
- 日本企業も一定の条件を満たす場合は対象となる可能性がある
CSRD開示要件は、3つの柱に分かれています。
- 環境分野では、気候変動対応や資源循環、汚染防止、生物多様性保全などに関する包括的な開示が求められる
- 社会分野では、人権尊重、労働者の権利保護、ダイバーシティ経営などがおもな開示項目となる
- ガバナンス分野では、取締役会の構成や役員報酬、リスク管理体制などの詳細な報告が必要とされる
CSRDの開示要件を満たすための準備を4つのステップで解説しました。
- ステップ1:ESG情報を収集する
- ステップ2:マテリアリティ評価を行う
- ステップ3:ESRSに基づいた報告書を作成する
- ステップ4:第三者保証を受ける
CSRDへの対応は容易ではありませんが、自社のサステナビリティ経営の高度化につなげる絶好の機会といえます。本記事を参考に、着実な準備を進めていきましょう。