1年も終わりが見えてきた11月。師走に向けて各企業様とも1年のラストスパートをかけていたのではないでしょうか。そんな多忙な2024年11月13日に、パーセフォニジャパンは金融機関向けにイベントを開催しました。
お忙しい中各社にお集まりいただき、最大収容80名のホールが満席になる盛況ぶりでした。
当イベントでは、当社から炭素会計の最新情報と最新の製品アップデートを解説。また当社のパートナーで、サステナビリティ分野における専門家の方々より、金融機関の地域脱炭素への貢献、という視点で知見をお話しいただきました。これまでの金融機関向けセミナーでは、最前線を歩む各金融機関様のお取り組みを紹介してきましたが、今回は趣が異なるため、参加者にとっても刺激になっていたのではないでしょうか。
セミナーは、パーセフォニジャパン代表の坂本晃一と、パートナーかつ今回の会場提供企業である株式会社三井住友銀行 執行役員 デジタルソリューション本部長 白石 直樹様による開催あいさつで幕開けいたしました。
講演及びネットワーキングまで含めると実に4時間半。白熱した当日の様子は1回のレポートでは収まりません。充実の講演内容のため2回に分けてお届けしていきます。今回の記事は前編です。
では、最後までお楽しみください!
イベント概要
日付:2024年11月13日(水)
時間:14:00~18:30
会場:株式会社三井住友銀行様本店
主催:Persefoni Japan合同会社
パネリスト&モデレーター(順不同)
- 株式会社三井住友銀行 執行役員 デジタルソリューション本部長 白石 直樹氏
- MS&ADインターリスク総研株式会社 リスクマネジメント第五部 サステナビリティ第一グループ 主任コンサルタント 三島らすな氏
- 株式会社バイウィル 代表取締役社長 下村 雄一郎氏
- 八千代エンジニアリング株式会社 事業開発本部 サステナビリティサービス部 課長 吉田 広人氏
- 株式会社三井住友銀行 サステナブルソリューション部 ソリューショングループ長 佐野 和秀氏
- ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社 執行役員 倉内 瑞樹氏
- Persefoni Japan合同会社 Country Manager 坂本 晃一
- Persefoni Japan合同会社 Director 真島 啓太
- Persefoni Japan合同会社 Director 遠藤 トレイ
脱炭素推進は1社だけでは解決しない課題 - 他者と手を取り合い情報共有を
イベントは、パーセフォニジャパン代表の坂本晃一のあいさつで幕を開けました。
坂本は「地域脱炭素を推進する上で、炭素会計を体系立てて取り組むためにはどのようにしたらいいのか。さらには、炭素会計の結果を踏まえてどうサステナビリティの開示に繋げていくのか。様々な開示枠組みを用い、今後各社のエンゲージメントを高めていくことが非常に重要な課題となっている」と述べました。
これらは当社の情報発信だけではなく脱炭素に取り組むものが一丸となってやっていけたらという点を強調しました。
本セミナーは講演による座学だけではなく、各社の横のつながりを作る意味も見出しています。それゆえに「この場を活用して各社の課題共有をすることで有機的なコミュニティが生まれることを願う」と坂本はその思いを参加者に熱く語りました。
続いて当社のパートナー様かつ今回の会場提供企業である、株式会社三井住友銀行 執行役員 デジタルソリューション本部長の白石直樹氏がこうコメントを寄せてくださいました。
「我々は今後もサスティナビリティ活動に対応していかなくてはならない。
直近はサステナビリティ基準委員会(以下、SSBJと表記)の基準に基づいた有価証券報告書へのサステナビリティの情報開示は、2027年3月期から大企業から順に義務化される見込みである。そして我々はこれに対応していく必要がある。
そのためにも排出量の算定を明確にしていくことは日本全体の持続可能な未来を築いていく上では非常に重要だと感じている」
今後も手を取り合い日本の脱炭素に取り組みに良い流れを作っていければ、と挨拶を締めました。
パーセフォニプロダクトアップデートについて
セッション1では、まず当社Directorの真島啓太よりプロダクトのアップデート情報についてについてレクチャーがありました。真島は当社の無償の炭素会計ツールであるパーセフォニProを用いながら説明。
当ツールは、炭素会計の知識がほとんどない方でも、直感的に操作できるインターフェースで、温室効果ガスの算定ができることが特徴です。さらにAIを搭載しているため、ユーザーの適切な支援ができるようなシステムとなっていることを訴えました。もちろんユーザー企業だけではなく、取引先からのデータ開示要求に対して、自社で算定したデータを機密性を持ってデータの共有ができることも特徴です。
Scope1、2、3の排出量算定を算定し、投資家や取引先への報告に適しています。金融機関やサプライチェーンの上流企業がエンゲージメントを高度化するためのツールとしても有効です。
グローバルでは2024年1月にサービスを正式リリースし、日本では7月に正式にサービス提供を開始。講演当時で4000ユーザーを超えています。
IFRSS2・SSBJ・ PCAFから見るファイナンスド・エミッションの算定開示
続くセッションでは、当社の金融機関担当セールスDirectorの遠藤トレイより、IFRSS2、SSBJ、 PCAFから見るファイナンスド・エミッションの算定開示についてお届けしました。
まずは、SSBJの最新草案を中心に解説。草案のうち、ファイナンスド・エミッションの項目については、IFRSS2における言及内容と変わりはない内容であることを指摘しました。
また、商業銀行のファイナンスドエミッションの開示項目も、SSBJ草案を用いながらご紹介。今後は、ファイナンスドエミッションのスコープ分解した算定と開示、さらにはGIGSの6桁コードを用いた産業分解が必要であることを指摘しました。これらの草案は2024年度に確定版が公開されると言われています。
遠藤は「当社の炭素会計専門家チームにて、産業連関表ベースの排出係数の作成方法や構造を踏まえ、適切な手法論にてScope1、2、3に排出量を分解(第三者検証済み)した係数を踏査している」と述べています。
現在パーセフォニ社では、EXIOBASEまたはUS EPAのデータベースにて排出量のデータを分解算定可能にしています。その結果、Scope1、2のみ報告排出量算定済み企業のデータを活用しつつ、Scope3のデータを二次データベースから引用することで網羅的かつ精度の高い算定の実施が可能になりました。
我々は細かな制度変更に対してこれからも対応できるように仕組みを作っていくことを約束し、セッションを終えました。
自治体や地域金融機関が協業することで自分たちにも好循環がもたらされる
パネリスト第1弾の講話者は、MS&ADインターリスク総研株式会社 リスクマネジメント第五部 サステナビリティ第一グループ 主任コンサルタントの三島らすな氏です。
同社は生物多様性のコンサルティングの事業を行ってきており、企業や金融機関の生物多様性・自然関連支援にも携わってきました。今回はそのご実績を踏まえて金融機関向けTNFDの最新動向とその対応というテーマにて講話をしていただきました。
三島氏は地域の「自然」と地域の「経済」はつながっていると強調します。地域金融機関の金融業は、営業基盤としての重要地域における社会経済活動と、それらの活動を支える地域の「自然」によって成り立っているからです。この環境を保持していくために、地域金融機関にしか出来ない評価とアクションが必要だと話します。
そのための一つの手法として、エリア別にそれぞれのセクターへの融資額などを見たヒートマップの作成や、地域ごとに公表している生物多様性や自然に係る上位戦略やデータの活用などが想定されます。しかし現状では、そこまで対応できている企業は少ないと指摘します。
まずアクションをしていくために押さえておきたいのが、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の自然版とも言えるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)、彼らの示す開示提言です。当該提言は義務化はされてないものの、自社と自然の関係の把握や、その結果に基づく適正化への対応を考えていく上では、一定の参考になるものと思われます。
TNFDではTCFDと異なる特徴があり、14 の開示提言の上に前提となるものとして「概念的基礎」と「一般要件」が提示されています。また開示提言文書の他に、金融機関向けのガイダンスもあり投融資方針、エンゲージメント、DD(デューデリジェンス)のプロセスなどに関しても言及があるため金融業を営む企業はこちらのガイダンスにも目を通す必要がありそうです。
金融機関に限らず全セクター向けに開示が強く要請され、開示しない場合は説明せよ、とされているグローバル中核指標については、金融機関ならではの特性も踏まえて依存・インパクトはマテリアルな場合のみ、リスクと機会は開示が要請されています。
さて、ここまでTNFDの提言を見てきましたが、ではどうアクションすればよいのか。三島氏は「地域金融機関としては、それぞれの営業基盤としての重要エリアの自然や産業の特性を踏まえた評価をし、その評価結果も踏まえて当該エリアで鍵となるような依存、インパクト、環境資産、生態系などを見つけ、それらに対して“正”となるような地域の社会経済の仕組みを考えていくことが最終的には望ましい」と主張しました。
最後に三島氏は「自然はつながっていて分断することができない。そのため一つの主体やエリアだけでの完全解決ができない。実は私たちの社会経済活動を支えてくれている自然環境や生物多様性、それらを保全する営みが継続できるような仕組みをつくっていく必要がある」と述べました。「1事業者だけでは解決できないことが多い。だからこそ自治体や地域金融機関が検討を進めてほしい、そしてそのことが最終的には地域金融機関にも好循環となって返ってくるのではないか」と締め括り、協働の大切さを強調しました。
さて前編ではセッション3までの様子をお届けしました。当社からのレクチャーが中心になりましたが、ここまででも盛りだくさんの情報となり、会場では真剣な眼差しで聞き入るご参加社の姿が印象に残りました。後半戦では、さらに多くの情報が金融機関向けに展開されていきます。その様子は次のレポート記事でお楽しみください。
このイベントを通じて、企業のみなさまにサステナビリティに関する行動変容のヒントがお届けできていたら幸いです。
それではまた、次回の更新をお楽しみに!