パーセフォニジャパンは、2024年7月26日に地域の金融機関向けにイベントを開催しました。
当イベントでは、気候変動への規制についての最新情報を解説するとともに、当社のパートナー様より、各種規制に向けた自社内での対応策や取り組みについて知見をお話しいただきました。
現在ISSB基準の導入を検討している我が国において、CO2排出量を正確に算定することがますます必要な状況です。加えて銀行をはじめとする金融機関は、自社のCO2排出量のみならず、Scope3の排出量を正確に把握して開示していくことが、徹底されるべきです。
セミナーは、パーセフォニジャパン代表の坂本晃一と、トップパートナー企業である、株式会社日立システムズ 金融事業グループ金融DX事業部 副事業部長の吉田和夫様による開催あいさつで幕開けいたしました。
本レポートはイベントを前編後編と2本に分ける形でイベントのサマリーをお送りします。今回の記事は前編です。
では、最後までお楽しみください!
イベント概要
日付: 2024年 7月 26 日(金)
時間:14:00-17:30
会場:東京都品川区大崎1-2-1
(パートナーの日立システムズ様のご厚意により日立システムズ様の本社会場をお借りさせていただきました)
参加者:当社パートナー、経営リーダー、サステナビリティ責任者、サステナビリティ従事者など
イベント概要:気候変動における規制/開示動向や地域の脱炭素化とビジネス化における最新動向の共有、ネットワーキング
<パネリスト&モデレーター(順不同)>
●パーセフォニ・ジャパン 坂本 晃一
●パーセフォニ・ジャパン 高野 惇
●パーセフォニ・ジャパン 遠藤トレイ
●株式会社日立システムズ 金融事業グループ金融DX事業部 副事業部長 吉田和夫様
●PCAF日本事務局局(CSRデザイン環境投資顧問株式会社)鶴野 智子様
●株式会社三井住友銀行 サステナブルソリューション部 佐野 和秀様
●株式会社 愛知銀行 総合企画部 経営企画グループ 調査役 河村 昭宏様
●株式会社ADKホールディングス EXコンサルティン局 サステナビリティ・ソリューショングループ プランニング・ディレクター 原口 政也様
パーセフォニジャパン 高野惇 が語る グローバル規制、開示動向と地域金融機関への影響
まずは、パーセフォニジャパンの高野 惇より、脱炭素化へのグローバル規制と開示の動向が、地域の金融機関へどのように影響するのか、海外の事例を用いながら説明がありました。
高野は規制動向のアップデートについて
「現在、ISSB基準の導入が世界各国で検討されています。世界のGDPの50%を超える約20の地域で導入検討中なのです。もちろん我が国も同様ですが、中国、インド、ケニアやナイジェリアなどのアフリカ地域、ブラジルなどの中南米地域においても検討が進んでいる」と指摘します。
これは先進国およびそれに準ずる世界をリードする国たちがいよいよ脱炭素基準の質を高めていこうとしていることを意味しています。
ISSBの基準の一つとして、SCOPE1、SCOPE2のみならず、”SCOPE3の排出量の算定”が含まれます。
金融機関各社は自社のことはもちろん、SCOPE3を算定していく上で、取引先であるサプライチェーンを通じてデータの共有をしあい、排出量の算定につとめていく必要があります。
日本以外の各国で今後ISSB基準が導入されるということはどういうことを意味するのか。つまりのがあるのです。
炭素税導入を見据えて企業は脱炭素活動を
さらに、高野は炭素税導入について「2024年6月現在、世界では28カ国で炭素税の導入が進んでいるところ」と指摘します。
各国の平均値をとると、約46USドルほどであり、現在の日本円に換算すると6,000〜7,000円前後となります。
日本では現在も炭素税が導入されていますが、2028年度以降さらなる施策をくわえようとしています。それが化石燃料輸入事業者に対して炭素賦課金の支払いを義務付ける制度です。
化石燃料輸入事業者は、石炭、天然ガス、石油など輸入した化石燃料の炭素含有量に基づいて炭素賦課金を支払うことになります。これにより、政府は化石燃料の使用に伴う環境への影響を金銭的に反映させ、脱炭素化への取り組みを促進する狙いです。
現在の日本で温暖化対策、温暖化対策にかかる税金は数百円程度。それを適切な価格に合わせてくるはずです。その際には世界の平均値をベンチマークにしてくるでしょう。
つまり6,000円〜7000円前後をターゲットとして意識されるよう議論が進む可能性というのはあります。この税金荷重は、まさに企業経営に直接的に関わってくるもの。租税を意識するという点でも脱炭素に関する取り組みは否めないと言えそうです。
世界の開示状況について、イギリスの事例より
ところで世界各国では一体どのような開示動向なのか。海外の事例として21年度よりファイナンスド・エミッションの算定を開始したイギリスの銀行、NatWest社の事例を高野は説明しました。
同行はPCAFに加盟しており、ビジネスローンをメインとする銀行です。中小企業様をスケールアップすることをミッションとしています。
ファイナンスド・エミッションを2030年までに2020年比で60%減にするという目標を立てている状況です。全ての融資業務において気候関連の情報が融資を決める際の評価の一つになっているというのが特徴的といえます。
このように脱炭素に向けて、着実にステップを踏みながら進めている金融機関が世界には増えています。
トランジション・ファイナンスやグリーン・ファイナンスなど企業価値を実感できる商品や、保険や証券化商品あるいは仕組み商品、具体的にはストラクチャーなど今後拡大していくようです。日本でもこれらの事象は参考になるのではないでしょうか。
炭素税導入を見据えて企業は脱炭素活動を
つづいて、PCAF日本事務局(CSRデザイン環境投資顧問株式会社)の鶴野 智子氏よりファイナンスド・エミッション開示要請の動向とPCAFの概要について説明がありました。
まずはおさらいになります。なぜファイナンスド・エミッションの算定・開示が必要なのでしょうか。
「社会のすべてのセクターがパリ協定に基づき、2050年までに排出量ネットゼロを達成するために、金融セクターは脱炭素化支援に対する投融資を通して、移行を促進する重要な役割を担っています。
彼らがまずは自社のポートフォリオにおける『気候変動リスク』と『GHG排出量』を理解するためには、投融資に係るGHG排出量(ファイナンスド・エミッション)の測定が重要となるのです」と鶴野氏。
そしてファイナンスド・エミッションを把握することは、金融セクターにおける以下の対応を可能にしてくれます。
・排出量削減目標の設定
・削減に向けた進捗状況の把握・開示
・削減に向けた具体的な行動のための社内議論、顧客へのエンゲージメン
ト、金融商品の開発
「ファイナンスド・エミッションは、金融機関の直接排出量に対して700倍以上の規模を有します。金融機関において、ファイナンスド・エミッションが最も重要な気候関連リスクであり、しっかり把握・管理することがも重要となります」と鶴野氏。
ここからはISSB基準について話が展開されました。
IFRS財団のもとで策定される国際会計基準は、現在140カ国に採用されています。日本でも使用を容認しており、当該財団は、国際的なサステナビリティ基準を開発するISSBの設置をCOP26で公表。 2023年6月には以下の2つの基準を公表しました。
• サステナビリティ関連財務情報開示の全般的要求事項(IFRS S1号)
• 気候関連開示(IFRS S2号)
IFRS S2号では、ファイナンスド・エミッションを開示することを要請しています。
同様に、国内でもサステナビリティ情報の開示基準の開発が進んでいます。サステナビリティ情報開示に関する日本基準開発機関であるSSBJが2022年に発足。ISSBの作成する基準との整合性を確保しつつ、必要に応じて我が国固有の要求事項を検討しています。
現在公開草案が2024年3月末に公表され、遅くとも2025年3月末までには確定基準が公表されます。現在公表されている公開草案においても、ファイナンスド・エミッションの情報開示に関する要求事項が含まれています。
ここまでは基準についてでしたが、開示の義務化についてはどのように展開していくのでしょうか。
鶴野氏は「現在金融庁のワーキンググループでは、SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報の有価証券報告書における開示・保証の義務化に関する検討が進んでいます」と話しました。
いよいよファイナンスド・エミッションの算定についても精緻に求められていく状況であることがわかります。
鶴野氏が日本事務局を務めるPCAFとは 金融向け炭素会計パートナーシップ(Partnership for Carbon Accounting Financials)の略であり、金融機関が融資・投資を通じて資金提供した先の温室効果ガスの排出を整合的に算定するための枠組みです。
金融セクターが透明性を確保しながら適切な開示を行い、排出削減に向けた行動を起こすことを支援しています。
現在PCAFには71を超える国と地域より、500を超える金融機関が参加しており、2024年4月現在の国内参画機関は27機関にわたります。
金融機関において、ファイナンスド・エミッションを把握するためには、こうした機関に加入しサポートを受けるということも一つの方策かもしれません。
無償サービス「パーセフォニPro」の可能性
セミナー前半の最後には、7月16日に日本国内にてリリースをした無償の算定サービス、「パーセフォニPro」のデモンストレーションを参加者の前で実施。
当サービスではGHG排出量のSCOPE1とSCOPE2(年内にはScope3まで対応予定)を無償で算定することが可能です。
自社はもちろんのこと、サプライチェーンや投融資先全体のGHG排出量の算定とデータ収集機能もあり、今回ご参加いただいた多くのステークホルダーを持つ金融機関様にとってメリットがあると、モデレーターの遠藤は強調しました。
無償のサービスをきっかけにまずは多くの人にお試しして欲しいと遠藤は最後にコメントを添えました。
喫緊の概況を参加者は熱いまなざしをささげながら、パネリストのスピーチに耳を傾けておりました。熱を帯びたセミナーはいよいよ後半戦へ。その様子は、後編においてレポートいたします!お楽しみに。