パーセフォニジャパンは、2024年7月26日に地域の金融機関向けにイベントを開催しました。
当イベントでは、気候変動への規制についての最新情報を解説するとともに、当社のパートナーより、各種規制に向けた自社内での対応策や取り組みについて知見をお話しいただきました。
現在ISSB基準の導入を検討している我が国において、CO2排出量を正確に算定することがますます必要な状況です。加えて銀行をはじめとする金融機関は、自社のCO2排出量のみならず、Scope3の排出量を正確に把握して開示していくことが、徹底されるべきです。
本レポートはイベントを前編後編と2本に分ける形でイベントのサマリーをお送りします。今回の記事では、イベントの後半の模様をレポートします。多くの参加者が熱心に耳を傾けた内容をぜひお楽しみ下さい!
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前編:【イベントレポート】気候変動における規制 / 開示動向や地域の脱炭素化とビジネス化における最新動向(前編)
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三井住友フィナンシャルグループ担当者が語る サステナブルファイナンスの動向とSMBCグループの取り組み
イベント後半のセッションでは、株式会社三井住友銀行 サステナブルソリューション部 佐野 和秀氏による、SMBCが進めるサステナビリティ支援ビジネスについてのセッションで幕を開けました。
同行が2年で経験した実務の例は多くの人に参考になることでしょう。
各金融機関においては、融資先のお客様のGHG排出量をどう可視化していくかが悩ましいのではないでしょうか。そしてそのデータを金融機関として次にどう生かしていくのかも課題です。
まずは、さまざまなセクターのファイナンスド・エミッション(略称:FE)の開示・対応状況について話がありました。
ファイナンスド・エミッションの開示状況について話がありました。
「これまでSMBCは石油ガス上流、そして電力発電のセクターのファイナンスド・エミッションの開示に合わせ、トランジションファイナンスの基準を定めるTransition Finance Playbookを策定していました。今年に入り自動車と不動産セクターも追加し、少しずつ対象セクターが拡大しています」と話します。
これらデータを活用しながら、脱炭素社会の実現に向けて、再エネ等の既に脱炭素の水準(グリーン)にある事業への取組に加えて、GHGを多く排出する産業を中心に省エネ・燃料転換等を含む着実な脱炭素化に向けた移行(トランジション)への取組に対するファイナンスを推進していくことが銀行としては重要となります。
佐野氏は「世界各地で状況の違う国がそれぞれ一歩ずつ前に進んでトランジションしていくことが大事だ」と強調しました。トランジションの進み方は世界各国で異なるからです。
トランジションとはブラウンからグリーンへの経過段階のことです。石炭火力等のブラウンエネルギーから脱炭素エネルギー(グリーン)に転換することは一足飛びにはいきません。
「石炭火力発電やガス火力発電で多量の二酸化炭素を排出してしまっているからといって、今すぐ全てを廃炉にして再生可能エネルギーに切り替えることはできないのです。そこで経過措置として低排出の燃料と混焼したり、日中の再エネ導入を促すための調整電源としてのガス火力を導入するのですが、実態経済の脱炭素に貢献すべくそこに新規融資をした瞬間に、今度は銀行としてのFEが大幅に増えてしまいます」
同行はこの移行のためのアセット・戦略関連のクライテリアを排出度合いにおいてラベル分けをし、明確な指針を打ち出しました。
この狙いは、移行戦略に積極的に組んでいる高排出セクターの企業様に対して、より⾧期的な視点で支援できるようにするためです。あくまで本件は、SMBCグループの事例にしか過ぎません。最後に佐野氏は「皆が同じような考え方で、世界の脱炭素にどうやって貢献できるかをシェアしたい。業界全体で同じ方向を向いていけたら、日本の金融機関はまとまるし、さらに世界の金融機関までもが同じ方向を向いていけたら、顧客は混乱しないのではないか」と述べました。
ADKが提案 丁寧なコミュニケーションをもって、サスティナブルへの興味を喚起する
後半の2番めのパネリストは、株式会社ADKホールディングス EXコンサルティン局 原口 政也氏。同グループではサスティナブル活動を支援するために各企業にコンサルテーションを行っています。
今回はコンサルテーションをする彼らから見て、金融機関各社が活かせそうなコミュニケーションの手法についてお話しくださいました。
投融資先のお客様にコンサルテーションをする際に、相手先企業は脱炭素活動にコストがかかる上に、コストが先行して利益が追いつかないと躊躇している人は多いのではないでしょうか。
しかし原口氏は「その先に勝機があり、利益が上がるのです。そのことを示せるロードマップを提示する必要が出てきます。このロードマップを作る際に、コミュニケーションが非常に重要になってくる。このコミュニケーションに対してもっと熱意を注ぐことが望ましい」と話します。
コミュニケーションには以下の3つの提供価値があるといいます。
1.社会における企業の存在価値を明確にする
2.自社の事業継続拡大へのコミットメント
3.ステークホルダーへの理解共感そして競争
この際に気をつけたいのは、ステークホルダーを投資家や株主のみに限定してしまうことです。アナリストを追うだけではなく一般消費者や学生や若者もあらゆるステークホルダーの一人。「この視点が必要だ」と原口氏は力強く語りました。
では実際に脱炭素についてどうコミュニケーションしていくのがいいのか。
具体的にはこの5つのポイントを説明しました。
1.消費者の環境問題に関する意識は変化している。今こそが脱炭素の情報と知識を伝えるべきタイミング。
2. 透明性を担保したコミュニケーションを通じて、消費者との信頼関係を築く。グリーンウォッシュの回避。
3.生活者が理解しやすくするためのストーリーテリング
4.生活者との対話によるエンゲーメント強化とのロイヤルティの醸成
5.他企業とインフルエンサーとの協業によって客観性を担保し、効果を高める。
これからの金融機関は、今一歩進んでステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを取ることが望ましいのでしょう。今からでもすぐ実践ができそうです。
あいちフィナンシャルグループの取り組み
後半最後のパネリストは、株式会社 愛知銀行 総合企画部 調査役の河村 昭宏氏。あいちフィナンシャルグループの取り組みと課題についてお話しいただきました。
愛知県を拠点とする愛知銀行・中京銀行を主な子会社として持つあいちフィナンシャルグループでは「脱炭素に向けた取り組みに加えて、マテリアリティの特定など、グループとしてサステナビリティの開示を進めている」と河村氏は話します。
脱炭素における具体的な削減施策の一例として、製造業における生産現場の改善支援に取り組んでいるとのこと。同社グループが愛知県を拠点としており、自動車セクターと資本財セクター向けの投融資が多いことが影響しているようです。
今後の課題としては、GHG排出量SCOPE3の算定高度化、第三者保証の取得だと掲げており、より精緻を求めていく姿勢であることが伺えます。
そのためには行員全体の意識の向上が不可欠だと話します。
「営業だけではなく、マネジメント層を含めた意識の向上が求められます。そのためには様々な研修や、資格の取得促進を行っています。こういったところを進めながら、グループ全体でお客様の脱炭素の取り組みを支援していきたいと考えています」
最後にパーセフォニの算定ツールを使用した所感にも触れてくださいました。
「よかったことの一つ目として、データエラーの減少が挙げられます。エクセルでマクロを組んでいると必ずどこかしらエラーが出ますが、まずそのようなことがなくなる。すごく楽になりました。二つ目は、データを最新の状態で維持できることです。エクセル管理の場合、都度自分でフォーマットを更新しなくてはならないものの、ツールを使えばそのようなことがなくなりました。
DXが推進されているけれど、それを使うのは人間。結局人と人のコミュニケーションがなければ、きっとDXも進まないし、仕組みも成り立ちません。そしてパーセフォニ社とツールを通じてコミュニケーションを取ることができること、これが三つ目の良かった点です」
と語り、課題解決に悩む企業へのアドバイスを持って最後のセッションの幕を閉じました。
このイベントを通じて、地方金融機関のみなさまにサステナビリティに関する行動変容のヒントがお届けできていたら幸いです。またnoteを読んで頂いた皆さんにも、会場で披露されたお話やノウハウが届きますように。