【よくわかる】TCFD 移行リスクとは?

Persefoni Team
筆者:Persefoni Team
2022年8月18日1 min read
2022年12月6日 11:47更新
2022年8月18日更新: 2022年12月6日 11:471 min read

移行リスクとは?

移行リスクとは、低炭素経済への移行に伴って生じるリスクを指します。気候変動対策が行われる過程では、政策、法規制、技術、市場など、広範囲において移行リスクが生じます。

私たちはまずリスクについて理解する必要があります。TCFDフレームワークの定義によると、気候関連リスクは二つに大別され、その一つが低炭素経済への世界的移行がもたらす移行リスク、もう一つが気候危機の物理的影響がもたらす物理的リスクです。

移行リスクはさらに、(i) 政策・法規制リスク、(ii) 技術リスク、(iii) 市場リスク、(iv) 評判リスクの四つの区分に分けられます。

物理的リスクは、急性リスクと慢性リスクの二つの区分に分けられています。

気候危機は加速していく、という前提があります。したがって、海面上昇、洪水、干ばつ、異常気象などの気候変動に起因する物理的リスクはますます身近な問題となっています。そんな中、ニューノーマルの世界で生き残りをかける多くの企業にとって、こうした物理的影響はもちろん、低炭素経済への世界的移行に伴う影響に適応することが絶対条件となっています。

移行リスクの四つの区分を詳しく見てみましょう。

業種や企業規模、事業活動地域など、ケースバイケースではありますが、概ね上に挙げたようなリスクが企業に影響を与えることになります。

移行リスクの影響を最も受けやすい業種とは?

低炭素経済への世界的移行は勢いを増しています。今後、どの業種も例外なく移行リスクに直面することになるでしょう。例えば、よりサステナブルな製品やサービスを選ぶ消費者動向を考慮すると、ほとんどの企業が評判リスクと直面することになります。さらに、原材料コストの増加はすべての業種に影響を与えます。

そのなかでも、石油、ガス、輸送などの炭素集約型産業のように移行リスクの影響をより受けやすい業種もあります。こうした企業には、化石燃料から再生エネルギーへの移行、ガソリン車からEVへの移行など、段階的な事業活動の見直しが必要不可欠です。

事業活動地域によっては、他の地域と比べて強力かつ急激な移行リスクに直面するところもあります。例えば、EU加盟国ではすでに炭素税制度が導入され、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)が近い将来導入されれば排出量の報告が義務付けられます。

低炭素経済への移行に伴うリスクは広範囲に及びますが、一方で、大きな好機も期待できると言えます。例えば、気候変動の影響を緩和するために、よりサステナブルな製品やサービスを提供する機会です。とはいえ、グローバル経済そのものを脅かす大規模な移行リスクが突如出現する可能性は否めません。

「グリーンスワン(緑の白鳥)」とは?

移行リスクの中には滅多に起きることがなく、事前の予測が難しい反面、実際に起きたら業種全体を脅かすほどのものがあります。こうしたリスクを「グリーンスワン」と言います。予測できないごくまれな事象が発生し、広範囲に甚大な影響を与えるリスクを意味する「ブラックスワン」になぞらえてできた言葉です。名付け親は、国際決済銀行(BIS)。「グリーンスワン」の代表例は座礁資産です。パリ協定で掲げられた目標を達成するためには、埋蔵されている(エネルギー源としての)石炭や石油の採掘を放棄し、そのまま地中に残さなければなりません。もう一つの例は、近年私たちが目の当たりにしているEVへのシフトです。始まりはかなり緩やかでしたが急激に加速し、自動車産業全体を巻き込んだディスラプション(大転換)に、もはや後戻りの余地はありません。

移行リスクがもたらす財務への影響

低炭素経済への移行は、一部の炭素集約型企業に大きな影響を及ぼすでしょう。しかし、ほぼすべての企業が、原材料コストの増加や、気候変動に関わる新しい規制の導入の影響を受けることもまた事実でしょう。例えば、炭素価格の上昇は企業財務とリンクしています。試算によると、2025年には企業の炭素価格は最大2,830億USドルに達し、13%の利益減に繋がる可能性が指摘されています。

先に紹介した四つのリスクそれぞれが企業財務へ影響を与えます。リスクの内容は、エネルギーコストの想定外の変動、消費者の好みの変化による製品・サービスの需要低下、座礁資産、新規または代替技術への資本投資など、多岐にわたります。

自社の文脈に置き換えた時、どの影響が財務に影響するかを見極め、どのように対策を講じるかはそれぞれの企業次第です。一方、場合によっては、財務的機会がリスクを上回るケースもあるでしょう。CDPが世界の大手企業500社を対象に行った2018年の調査によると、気候に関わる移行リスクを申告した215社のリスク総額は9,700億ドルで、気候変動に関わる機会を申告した225社の機会総額は2兆1,000億ドルでした。

移行リスクの影響を抑えるために

気候変動の物理的影響と低炭素経済への移行に伴う影響が財務に与えるインパクトはますます顕在化し、より多くの企業が気候関連リスクの対策を迫られることになります。気候関連リスクを軽減するための第一歩は、炭素排出量の正確な把握とバリューチェーン内に存在する排出源の特定です。

移行リスクの影響を抑えるために、以下の五つのステップをおすすめします。

  1. マテリアリティ評価の実施 - 事業活動、サプライチェーン、製品・サービスのライフサイクル全体を視野に、自社にとっての重要課題を把握します。

  2. シナリオ分析の活用 - 低炭素経済移行後の姿について複数の仮説を立てて評価。その結果を踏まえて、将来予想される状況に対応するための計画や戦略を構築します。

  3. 機会の特定 - 世界的な脱炭素化目標、消費者・従業員・投資家の好み、新規・新興市場に照らして、経営と投資のあり方を検討します。

  4. 目標設定 - 炭素排出量削減に関して挑戦的な目標を立てます。特SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく目標)気候変動対策と移行リスクの軽減に対する積極的な姿勢を明確に示すことができます。

  5. 情報開示と働きかけ - 炭素排出量、気候関連リスク・機会を年次報告書やESG報告書で開示します。開示のメリットとしては、組織としての透明性の向上やリスクの軽減だけでなく、サプライチェーンへのポジティブなインパクトも含まれます。

移行リスクを評価するための企業向けのサポートツールがいくつか一般に公開・提供されています。その一つ、国連環境計画・金融イニシアティブが提供している「Transition Check」は、TCFDガイダンスに則したシナリオ分析に基づき、事業とポートフォリオ全体の移行リスクを評価できるウェブ・ツールです。

■パーセフォニ プラットフォームの無料デモセッションはこちらからお申し込みください。

<メディア問い合わせ先>
パーセフォニ・ジャパン広報担当 Email

パーセフォニの気候専門家チームによる業界最新ニュース・コラム
making sense of climate disclosure
White Paper
Making Sense of Climate Disclosure
TCFD Scenario Analysis
E-Book
TCFD's Role in Emerging Climate Regulations