保険業務に紐づく排出量

PCAFにより今後導入される予定の「保険業務に紐づく排出量」の最新情報について、パーセフォニの専門家がレポートします。
CC Chatzicharalmpous
筆者:CC Chatzicharalmpous
2022年7月7日1 min read
2022年11月28日 18:01更新
2022年7月7日更新: 2022年11月28日 18:011 min read

ネットゼロ達成へ保険会社が担う役割

世界全体で扱われている保険料のトータルは6兆ドル(約800兆円)以上、運用資産額は36兆ドル(約5000兆円)以上に上ります。この数字を知れば、保険業界のバランスシートが、世界経済全体における資産(アセット)と負債(ライアビリティ)の中で非常に大きな割合を占めていることがお分かりになると思います。別の角度から見れば、保険業界は、彼らが実行するリスク管理、リスク移転、投資などの主要な業務を通じて、カーボンニュートラル社会に大きく貢献できる可能性を持つ、キープレイヤーと言えるのです。

保険業務に紐づく排出量

現在、投融資に紐づく排出量を算出する炭素会計基準は存在します。しかし、今後は保険・再保険会社の引き受けポートフォリオに紐づく温室効果ガス排出量を算出するためのグローバルで標準化された新たな基準が必要になります。近い将来この基準がまとまれば、保険会社は、自社の引き受けポートフォリオが気候変動に与える影響を把握でき、脱炭素化への指標とすることができます。

  • 排出量データ開示報告の継続的な実施

  • データクオリティと透明性の継続的な向上

新しい基準に従い、上記が行えるようになれば、目新しい脱炭素系商品や新しい企業ポリシーが次々と誕生することが予想されます。

保険会社にとって、新たな基準が設定されることで得られる利点は何でしょうか?
端的には、「自社の(ポートフォリオの)脱炭素化促進」が答えになります。

自社の保険業務に紐づく炭素データがあれば、それを活用して、

  • 脱炭素 目標設定

  • 脱炭素 シナリオ分析

  • 脱炭素 戦略シミュレーション立案

などが行えるようになるのです。さらに、引き受け業務のビジネス決定に役立つような情報を得ることも可能になります。

基準設定のプロセス

保険・再保険引き受け業務を対象とした炭素会計メソッド開発のたたき台となっているのが「スコーピング・ドキュメント」と呼ばれる資料となり、資料作成の中心となっているのが、PCAFです。「スコーピング・ドキュメント」編纂の主な目的は、保険に紐づく排出量について、より幅広く意見を交換し、得られたフィードバックを元にして「(算出メカニズムに関する)コンサルテーション・ペーパー」を作成することです。ちなみにこの「コンサルテーション・ペーパー」は近日中に一般公開されることが予定されます。

新たな基準について今わかっていること

複数のビジネスライン

現在開発中の新しい基準(算出メソッド)が対象としている範囲は「カーボンニュートラル経済への移行において主要な役割を果たす保険種目」となるでしょう。

具体的には、保険・再保険事業が取り扱っている事業用保険個人用自動車保険が対象になることが予想されます。一方で、当面の間は、個人を対象とする一般的な生命保険や医療保険は対象外となる見込みでです。

「フォロー・ザ・マネー(お金を追え)」の原則とは?

PCAFが現在公表している”投融資先の排出量”算出基準やに関しては、「フォロー・ザ・マネー」の原則が適用されます。「フォロー・ザ・マネー」というのは、リアルな経済圏において、金融資産が気候変動に与える影響を的確に把握するために、可能な限りリアルなお金の流れを追うべきだ、という考え方です。ちなみに、炭素会計のもう一つの既存基準であるGHGプロトコルが、財務報告で用いられる組織境界の概念(経営支配力、財務支配力、出資比率)をベースに組み立てられているのも、「フォロー・ザ・マネー」の考え方があるからです。

しかし、他の金融取引の場合と比べて、引き受け業務は、保険会社と顧客との関係性が根本的に異なります。なぜなら、引き受け業務が、経済活動のリスク軽減を目的としており、保険会社自身は、引き受け業務に資金を提供しないからです。保険会社は顧客に対して財務的な支配も直接的な業務上の支配も持っていません。つまり、引き受け業務の炭素会計メカニズムには、上記で示したの組織境界の概念は適用されないことになります。

言い換えると、保険業務において、保険会社が、顧客企業に対する所有権や支配権がないということは、顧客企業の脱炭素化に対して保険会社が持ちうる影響力が、他の金融活動の場合とは性質が異なる、ということです。従って、保険に紐づく排出量の算出メカニズムの原則となるのは、「フォロー・ザ・マネー」ではなく 「フォロー・ザ・リスク」となるのです

排出量の「帰属割合」について

保険がかけられたリスクに紐づく排出量のうち、(再)保険会社に帰属する割合をどのように算出するかについて、様々なアプローチが検討されています。前述した「スコーピング・ペーパー」では、現在の保険業務で利用されている複数の指標を活用することで帰属割合(保険会社が負担すべき割合)を導き出そうとしています。しかし、その妥当性・公平性についてはまだ検討の余地があるようです。基準開発者の究極的な目標は、できるだけ効果的に、できるだけ効率的に排出量の削減を促すことのできるような帰属係数を採用することです。

保険排出量の基準設定は何が難しいか?

多岐にわたるビジネスライン

一種類の算出メカニズムを構築し、それを複数のビジネスラインに一律に適用させるのか、または、複数のビジネスラインごとに個別の異なる算出メカニズムを構築し、開示報告もビジネスラインごとに個別で行うのか?新しい基準設定に際して、PCAFが今一番頭を悩ませているのはこの点です。
一種類の算出メカニズムのみであれば、算出に必要になるデータの種類や総量も小さくなることが予想されるので、保険会社にとっては理解しやすく、比較的シンプルに算出が行えるでしょう。一方で、この方法だと、ポートフォリオに紐づく排出量の細かい分類や、保険適用範囲と対比させた排出量の把握をすることは難しくなるでしょう。

二重計上

PCAFが炭素会計基準の重要テーマとして掲げているのは、透明性と継続性であり、その方向性は今回の保険分野でも変わりません。しかし、保険に紐づく排出量の算出メカニズム構築に関して、現時点まででPCAFが公表している(パーセフォニが把握している)情報を見る限り、新しい基準は、引き受け業務(に紐づく排出量)と投資ポートフォリオ(に紐づく排出量)の二重計上を前提としているのではいかという点が指摘されています。
もちろん、状況によっては二重計上になるのは仕方がないケースも出てくるかもしれません。特に、様々なセクターにまたがったスコープ2とスコープ3の排出量を算出するようなケースです。こういった場合、開示報告する際は、絶対排出量だけでなく、排出量算出の考え方やデータ内訳も報告する必要が出てくるかもしれません。(もしそうなれば、他社にはないパーセフォニの特徴である”台帳”機能がなければ、開示には対応できなくなります)

データクオリティと入手可能なデータ

パーセフォニは保険に紐づく排出量の算出メカニズム構築に関わっている専門家・当事者の方々と日常的にコミュニケーションを続け、意見交換をしています。その中で最近得た情報として、「保険会社にとって一番のハードルとなり得るのが、算出に必要な顧客関連データをいかに入手できるか、という点です」というものがありました。
必要なデータが揃わないことには、引き取り業務の排出量算出はもちろんままなりません。複数ある選択肢の中からどの帰属係数を選ぶかで、算出に必要なデータの種類が変わってくることが考えられ、場合によっては非常にアクセスしにくい顧客データが必須になるケースもあるかもしれません。


保険会社のお客様がパーセフォニを選ぶ理由

GHGプロトコルと、PCAFという炭素会計の2大スタンダードを2つとも実装している唯一のSaaSプラットフォームとして、パーセフォニは今回の保険排出量算出基準設定に関しても、策定当事者からとても近い距離で日々の最新情報をアップデートし続けています。

近い将来、保険排出量算出メカニズムがPCAFより正式にリリースされた際には、パーセフォニこれまで同様、基準メカニズムをいち早くプラットフォームに実装し、お客様のお役に立つつもりです。
基準自体は非常に複雑な構造になっていることが予想されますが、多機能・柔軟性が大きな特徴であるパーセフォニのプラットフォームは、今後も新しい基準を順次コード化・プラットフォームに実装しながら、お客様により使いやすいツールとして進化・向上していく予定です。
そして、今後も世界の脱炭素化をサポートし続けます。

もし、PCAFやGHGプロトコルに準拠したかたちで、自社の排出量算出を自動化することにご興味がございましたら、パーセフォニプラットフォームの無料デモセッションにお気軽にお申し込みください。お申し込みはコチラから。

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パーセフォニは、気候変動管理・会計プラットフォーム(CMAP)のリーディングカンパニーです。当社のSaaS型ソリューションを利用することにより、企業や金融機関は、ステークホルダーや規制当局が求める気候変動に関する情報開示業務を、高い信頼性、透明性、利便性をもって行うことができます。パーセフォニのプラットフォームは、「炭素分野のERP」ともいえます。炭素管理の一元化を実現し、企業は従来の経理業務と同様の厳密さと信頼性をもって、炭素会計・管理業務を進めることができます。

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